当事務所に寄せられた相談事例をご紹介いたします
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【 質問 】 私の夫とその父親は、飛行機事故に遭い、2人とも死亡してしまいました。
このような場合、相続関係はどうなるのでしょうか。なお、夫の母親は健在であり、私と夫の間には子供がありません。
【 回答 】 夫と父親は同時に死亡したものと推定され、その相互間では相続は生じません。
すなわち、夫の相続に関しては父親はすでに死亡したものとして、また、父親の死亡に関しては夫はすでに死亡したものとして扱われます。
その理由として、同じ事故で2人以上の者が死亡した場合には、それぞれの正確な死亡時刻がわからないことが多いものです。
そこで民法は、死亡した数人中の1人が、他の者の死亡後になお生存していたことが明らかでない場合には、これらの者は同時に死亡したものと推定すると規定しました。
これを「同時死亡の推定」といいます。
また、この同時死亡の推定の規定は、同一の危難に遭って死亡したことを要件とはしていません。
すなわち、別々のところで別々の原因で死亡したが、その死亡の先後がわからない場合にも適用されます。
以上の規定から、ご質問の場合の相続関係は、まず父親の相続は、母親と夫の兄弟姉妹が相続人となり、次に夫の相続は、妻であるあなたと夫の母親が相続人となります。
最後になりますが、同時死亡の推定はあくまで推定にすぎませんから、反対の証拠をあげてこれを覆すことは可能です。
すなわち、同時死亡の推定により同時に死亡したものとして相続された後に、死亡の先後が明らかになったときには、すでになされた遺産分割協議は無効とされ、再度、遺産分割協議を求めることができます。
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【 質問 】 ある人が亡くなったときに、誰が相続人になって、どのように相続することになるかについて教えてください。
【 回答 】 「 相続人となる者 」、「 その相続する割合 」は民法により定められており、これを前者を「 法定相続人 」、後者を「 法定相続分 」といいます。
なお、法定相続分は、特別受益・寄与分といった理由により修正されることがありますので、注意が必要です。
具体的に言うと、「 法定相続人 」とは、民法の規定により、第1順位~第3順位まで定められています。
まず、配偶者は常に相続人になります。
第1順位の相続人とは、亡くなった人に子があれば子が配偶者とともに相続人になります。
第2順位の相続人とは、子がないときは直系尊属(親、祖父母、曾祖父母など)が配偶者とともに相続人になります。
第3順位の相続人とは、子も直系尊属もいないときは兄弟姉妹が配偶者とともに相続人になります。
なお、相続人がすでに死亡している場合には、代襲相続制度があります。
次に、「 法定相続分 」とは、これも民法の規定により定められています。
前述の民法の規定により法定相続人が決まるとそれぞれの場合に、各相続人が相続する割合が決められており、これを法定相続分といいます。
第1順位の法定相続人の場合は、配偶者2分の1、子2分の1になります。
第2順位の法定相続人の場合は、配偶者3分の2、直系尊属3分の1になります。
第3順位の法定相続人の場合は、配偶者4分の3、兄弟姉妹4分の1になります。
なお、子、直系尊属、兄弟姉妹がそれぞれ複数の場合には、各自の法定相続分は原則として平等になります。
ただし、兄弟姉妹については、父母の一方が違う者は同じ者の2分の1になるという違いがあります。
最後になりますが、以上において説明した法定相続分は、特別の場合(例えば、遺言で相続分を指定した場合等)にはこれが修正されることがあり、これを「 指定相続分 」といい注意が必要となります。
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【 質問 】 私の夫は、銀行の貸金庫を借りていましたが、先日亡くなりました。
夫は、貸金庫の中に証券類とともに遺言書を入れていた様子でしたので、私が銀行に貸金庫の開扉をお願いしたところ、銀行は相続人全員の立会いが必要であるといって応じてくれません。
どうしたらいいでしょうか。
【 回答 】 銀行の説明どおりなのですが、他の相続人の立会いや同意が得られないときには、公証人に依頼して、事実実験公正証書の作成を嘱託し、公証人の立会いを得て貸金庫を開扉することができます。
そして、貸金庫の中に、遺言書が発見された場合、その引取りについて銀行と協議することになります。
次に、 相続人による貸金庫の開扉、内容物の点検を行うことになります。
貸金庫契約は、利用者である夫と銀行との間の賃貸借契約と考えられていますから、利用者の利用権は、相続の対象になります。
したがって、相続人全員の同意もしくは立会いがあれば、銀行に対して貸金庫の開扉を求めて内容物の引取りまで行うことができます。
その際に、あらかじめ法務局から「法定相続情報一覧図の写し」の交付を受けておけばスムーズに対応してもらえるでしょう。
これに対して、一部の相続人による貸金庫の開扉について、銀行の対応は否定的な考え方をとっています。
具体的にいいますと、貸金庫を利用し内容物を引き取る権利についても相続の対象になっている以上、遺産分割協議を成立させて貸金庫の契約を相続する相続人を決めたうえでないと、開扉に応じないという考
え方です。銀行は、内容物の出し入れについて銀行は立ち会わないという仕組みから言えば、やむを得ない取扱いであるといえます。
最後になりますが、公正証書遺言を除く遺言書を発見したときは、遅滞なく遺言書を家庭裁判所に提出して検認を受けることを忘れないで下さい。
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【質問】母が亡くなり、私たち兄弟4人が各4分の1の割合により相続することになりました。
母の財産として、株式、投資信託受益権および個人向け国債があります。
これらの相続はどのようになりますか。
【回答】結論としては、株式、投資信託受益権および個人向け国債のいずれについても、相続開始と同時に当然分割されるものではありませんので、共同相続人である兄弟4人で協議して分割方法を決める必要がありま
す。
遺産分割前の相続財産(遺産)は、相続人が数人あるときは、相続人の共有になると定められています。
そして、共有に属する遺産は、遺産分割の手続きに従って分割されることになります。
しかし、銀行預金等の金銭債権は、分けて支払いを受けることができるという意味で可分債権といいます。
このような可分債権は、相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割され、各相続人に相続分に応じて帰属すると解されています。
したがって、銀行預金等の金銭債権は、相続人間で遺産分割の対象とすることを合意した場合を除き、遺産分割の対象にならず、各相続人は、自己に帰属する債権部分について単独で支払
いを請求することができます。
最後に具体的に説明しますと、
「株式」は、遺産分割の対象になりますから、相続人間で分割方法を協議する必要があります。
「投資信託受益権」は、相続開始と同時に当然分割されるものではなく、相続人間で分割方法を協議する必要があります。
「個人向け国債」は、相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されるものではなく、相続人間で分割方法を協議する必要があります。
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【質問】 亡くなった父は、銀行に預金口座をもうけていました。
相続人は、母、私、弟の3人いますが、私が単独で、銀行に対し、父の預金の取引経過を開示するよう求めることができるでしょうか。
【回答】 結論としては、共同相続人の一人が単独で、金融機関に対し、亡くなった父の預金に関する取引経過の開示を請求することができます。
理由としては、預金債権については、平成28年12月19日に最高裁判所の判例が変更され、預金債権は相続が開始されると同時に法律上当然に分割されるのではなく、遺産分割の対象となると判断されまし
た。
そして、金融機関に金銭を預け入れる預金契約の基本的な法的性質は、消費寄託であると解されています。
消費寄託というのは、寄託者(預金者)が金銭等の代替物を受託者(銀行等)に預け、受託者が預かった物と同種・同等・同量の物を返還することを約する契約です。
消費寄託の受寄者には、委任の場合と異なり、寄託の内容を報告する義務はありません。預金契約が純粋に消費寄託の性質しか有しないとすると、金融機関には取引経過を開示する義務はないと解される余地が
あります。
しかし、この点について、最高裁判所は、預金契約は消費寄託の性質に加えて、委任ないし準委任の性質を有するとの前提に立って、委任契約において受任者に求められる報告義務として、金融機関の開示義務
が認められると判断しています。
このようなことから、最高裁判所はこの点について、「共同相続人全員に帰属する預金契約上の地位にもとづき、被相続人名義の預金口座についてその取引経過の開示を求める権利を単独で行使することができ
る」と判断しました。
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【質問】 死亡した夫が残した財産の中にゴルフ会員権がありますが、ゴルフ会員権を相続することについて教えてください。
【回答】 ゴルフ会員権の大部分は預託金会員制であり、ゴルフクラブの会則の内容により、相続できる場合と相続できない場合があります。
まず、ゴルフ会員権とは、会員制ゴルフ場におけるゴルフクラブの会員の地位を言います。
そして、会員制には、預託金会員制、株主会員制、社団法人制の3つの種類があり、その多くは預託金会員制になっています。
最も多い預託金会員制のゴルフ場においては、会員となろうとするものはゴルフ場と入会契約を結び、入会保証金を預託することにより会員になります。
この会員のゴルフ会員権は、ゴルフ場施設の優先的利用権、据置期間経過後の退会によって生じる預託金返還請求権、年会費を納める義務を内容としています。
結論としては、預託金会員制のゴルフ会員権の相続において問題となるのは、相続の対象になるのかどうかということです。
基本的には、会員との契約の内容、その契約の内容の一部となっているゴルフクラブの会則などの規則の内容によって決まることになります。
例えば、会則に「会員が死亡したときは、会員資格を失う」の定めがある場合、相続人はゴルフ会員権を相続することはできません。
ただし、会則上は会員資格を失うとされている場合であっても、実際の運用では、ゴルフクラブの理事会の承認を得て相続を認めているゴルフ場もあります。
また、ゴルフ会員権の相続が認められていない場合に、会員の資格は失うことになりますが、据置期間経過後に預託金の返還を受ける権利は相続することが認められます。
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【質問】 私の父が信号無視をした車による交通事故で亡くなりました。
遺族として、加害者に対しどのような請求ができますか。
また、父が即死した場合と、重傷を負いしばらくして死亡した場合とでは異なりますか。
【回答】 ご質問の場合、死亡による損害賠償請求権を、財産的損害賠償請求権と非財産的損害賠償請求権の両方について相続して、加害者に対して請求できます。
また、即死の場合と、重傷を負った後死亡した場合とでの差はありません。
「財産的損害」には、葬儀費用や医療関係費のほか、死亡した人の逸失利益があります。
また、「非財産的損害」というのは、生命が奪われたことによる精神的損害、すなわち、慰謝料のことです。
まず、財産的損害賠償請求権の相続についてですが、現在では、即死の場合も重傷を負ってその後死亡した場合も、死亡者本人に発生した死亡による財産的損害の賠償請求権が相続人に相続されると考えられて
います。
次に、非財産的損害賠償請求権の相続について、現在では、被害者が(父)が慰謝料請求権を放棄したような特別の事情がない限り、被害者本人が慰謝料請求権を取得し、それを相続人が相続すると考えられて
います。
最後になりますが、遺族固有の慰謝料請求権との関係があります。民法711条は、生命が侵害された場合、一定の遺族に固有の慰謝料請求権を認めています。
したがって、、死亡者の遺族としては、死亡者本人の慰謝料を相続したものと固有の慰謝料の両方を請求できることになります。
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【質問】 私は兄と2人兄弟ですが、5年位前に父が亡くなり、先月母が亡くなりました。
父の遺産分割協議の際に、母が兄に相続分を譲渡したため、私が4分の1、兄が4分の3の相続分により、兄と協議の上、遺産分割が成立しました。
この度、母の遺産の相続について兄と協議することになりますが、父の相続の際に母が兄に相続分を譲渡したこともあって、母にはわずかな遺産しかありません。
父の相続の際になされた母から兄への相続分の譲渡を、贈与と同じように、母の相続についての私から兄に対する遺留分侵害額請求にあたり考慮してもらえますか。
【回答】 結論としましては、父の相続の際になされた母から兄への相続分の譲渡を、母の相続の際に母からの贈与と同じように、その額を遺留分侵害額算定の基礎となる財産額に算入して、兄に対し遺留分侵害額請求が
できるものと考えられます。
そこで、遺留分侵害額請求が問題となる事実が生じる場合とは、法分上、遺言による遺贈・贈与(生前贈与および死因贈与)、相続分の指定ならびに特定財産承継遺言がある場合とされています。
そして、このほかに、相続分の譲渡を贈与と本質的に変わらないものとして、その価額を遺留分侵害額算定の基礎となる財産額に算入すべきかどうかがここでの問題です。
最高裁判所の判例(平成30年10月19日)において、「共同相続人間においてされた無償による相続分の譲渡は、譲渡に係る相続分に含まれる積極財産及び消極財産の価額等を考慮して算定した当該相続分
に財産的価値があるとは言えない場合を除き、譲渡をした者の相続において、民法第903条第1項に規定する「贈与」に当たる。」と判断したものがあります。
この判例は法改正前のものですが、改正後の遺留分侵害額請求においても、同様に解することができるものと考えました。
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【質問】私は、夫と共に夫名義の建物に住んでおり、子供2人は、独立して別の場所に住んでいます。
今後、夫が亡くなった後も、この建物に住み続けることはできますか。
【回答】平成30年7月の民法改正により、「配偶者短期居住権」と「配偶者居住権」の制度ができました。
そして、配偶者短期居住権とは、遺産分割までの間の配偶者の居住を認める制度です。また、配偶者居住権とは、遺産分割後に配偶者の居住を確保する制度として定められたものです。
したがって、これらの権利が認められる範囲で、ご質問の妻は建物に居住することができます。
次に、【配偶者短期居住権】と【配偶者居住権】の内容を詳しくに説明したいと思います。
配偶者短期居住権とは、配偶者が、被相続人の遺産である建物に相続開始の時に無償で居住していた場合に、遺産分割が終了するか、相続開始の時から6か月を経過する日のいずれか遅い日までの間、その居住建
物を無償で使用することができる権利のことを言います。また、他の相続人の同意を得ることは必要ありません。しかし、居住建物を賃貸の用に供することはできません。
配偶者居住権とは、配偶者は、被相続人の遺産である建物に、相続開始の時に居住していた場合において、つぎのいずれかに該当するときは、居住建物について無償で使用および収益をする権利を取得するものと
定められました。①協議、調停および審判による遺産分割において、配偶者居住権を取得するものとされたとき。②配偶者居住権を遺贈するという遺言があるとき。③被相続人と配偶者との間に、配偶者に配偶者居
住権を取得させるという死因贈与契約があるときです。
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【質問】 私は、内縁の夫が借りている借家に一緒に住んで暮らしてきました。
先日、内縁の夫が亡くなりましたが、私は引き続き借家に住むことができますか。
【回答】 内縁の妻は夫に相続人がいる場合には、借家権を相続することはできません。
ただし、相続人が相続した借家権を援用することにより、借家に住むことができます。
よくあることですが、家主や相続人からの明渡請求は、特別な事情のない限り、権利の濫用とされています。
(参考になる事項)
「借家権の相続」: 借家権は、財産的価値のある権利ですから、相続の対象になります。
借家人が死亡すると、その人に属していた借家権が相続人に相続されます。
ここで、相続人が複数いる場合には、相続人の遺産分割協議によって、誰が借家権を相続するかを決めることになります。
「内縁の妻の居住権の問題」: 内縁の妻は、婚姻届は出していないが実質的には夫婦と同様の関係にある者ですが、相続権はありません。
そのため、借家権を相続できない内縁の妻は、家主や相続人の明渡請求に応じなければならないという問題がおきてしまいます。
そこで、相続人がいない場合には、昭和41年に新設された「借家法7条の2」により内縁の妻は、亡くなった借家人の権利義務を承継することが認められました。
なお、平成4年8月1日から施行されている「借地借家法36条」によっても同様の規定がされています。
そして、内縁の妻は、借家契約の借家人の地位を引き継ぐこととして家賃を支払えば、家主からの明渡請求に応じる必要はありません。
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